一般社団法人をこれから立ち上げるというときは、設立時にその法人の根本規則である「定款」(ていかん)を作って公証役場で認証を受けなければなりません。
一般社団法人の定款の絶対的記載事項
この一般社団法人の定款には、必ず定めておかなければならない項目があります(逆にいえば、これらの定めが無いと一般社団法人の定款としての効力がありません)。
これを「絶対的記載事項」といいますが、以下のような7つの項目がそれにあたります。一般社団法人の設立にあたっては、この絶対的記載事項をまず確定させて、次にそれ以外に必要な任意的記載事項等を検討していくことになります。
一般社団法人の名称
まずはその一般社団法人の名称が絶対的記載事項となっています。
名前が決まらなければ、登記もできませんし銀行口座も開けませんし、契約だって結ぶことができません。ですので、これは当たり前といえば当たり前のことですね。一般社団法人の名称は、必ず定款で明確に定めておかなければならないことになっています。
通常は、定款の最初の最初、第1条で一般社団法人の名称を記載してしまうことがほとんどでしょう。
目的
目的については詳しく説明しようとすると色々難しい問題もありますが、簡単に言ってしまうと「法人」や「会社」というのは、定款で「目的」として定められたことを行う団体であり、また定められていないことは原則的には行うことができない団体です。
そのため、その一般社団法人を設立した目的、そしてその目的達成のために必要な事業などは、定款にも目的として記載しておくことが求められます。
定款の目的は、ただやりたいことを列挙しておけばよいものではなく、たとえば設立後にある事業を行う際、行政庁から許可を受けようとする場合、この定款の目的がどのような記載になっているかが大きな影響を及ぼします。
そのため、事業を行うことに支障がない目的の記載であるかは、設立前段階でしっかり確認したほうがよいです。
そして、逆に最初から何でも目的に記載してしまうと、設立後に法人の口座を開設しようと思ったときに金融機関から警戒されるなど、面倒が生じることもあります。設立の時点で、将来法人で取り扱う可能性が高いものに絞って列挙していくと手続きがスムーズです。
主たる事務所の所在地
一般社団法人の定款で定めるべき「主たる事務所の所在地」は、会社でいうところの本店所在地ですね。
どこに一般社団法人の本拠地があるのか、設立において定款にも明確に記載する必要があります。とはいえ、定款には事細かに建物名や部屋番号まで書いておく必要はありません。東京都であれば「豊島区」といったレベルで留めておくこともできます。
設立後、同じ地域内で移転する可能性が高いときは、あまり詳細な所在地を記載しないほうが手続き的には面倒が少なくて済みます。たとえば、部屋番号まで書いてしまっていると、すぐ近くに移転する場合でも社員総会を開いて定款変更を行わなければ主たる事務所の移転ができなくなってしまうためです。
設立時社員の氏名と住所
一般社団法人を設立する際、社員(構成員)となる人の氏名と住所は、定款に必ず記載します。誰と誰が構成員となって、団体である一般社団法人を設立したのか、わからないとその後の手続きが進まないためです。
この設立時の社員の氏名と住所は、そのまま登記等に公開されるわけではありません(設立時社員が理事長を兼ねる場合などを除く)。そのため、住所がバレてしまうのは気が引ける・・・といったご心配には及びません。
社員資格の得喪に関する規定
一般社団法人には構成員である「社員」(会社の従業員としての社員とは別の意味です)が必須です。構成員がいなければ社員総会を開けず、意志決定や理事を選ぶことさえできなくなってしまうためです。
どんな要件を満たすとその一般社団法人の構成員である社員になることができ、またどんなことをしてしまうと社員の資格が無くなってしまうのかについては、その一般社団の根本に関わる重要なことなので、定款に記載しておく必要があります。
公告方法
一般社団法人では「公告方法」も、必ず記載しておかなければならない事項です。法律などの要請で何かを公に告知しなければならないとき、どのような手段でそれを行うのかを記載しておくことになります。
ちなみに、一般社団法人設立のガイド本やネット上の定款ひな形などでは、公告方法を「官報に掲載する方法とする」的な条文が多いですが、官報を使うと公告の際に費用が発生してしまいます。
設立手続きを進められる団体の多くは、「主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法」など簡易な方法をとるケースが多いです。
事業年度
その一般社団法人の会計を何月何日から始めて、何月何日で締めるかという事業年度を定款で決めておきます。
事業年度は決算や税金とも絡む項目なので、なんとなく他の法人もそうしているからと適当に決めてしまうのではなく、その法人に合った事業年度になるようよく考えて決算の時期などを調整するほうがよいです。
以上が一般社団法人の定款で必ず定めておかなければならない「絶対的記載事項」です。