法人を設立すると、給与や一定の報酬を支払った際に源泉徴収する必要があります。
そして、源泉徴収した所得税は国に納付しなければなりませんが、その納期限にはかなり注意が必要で、実務上は、法人設立直後が特に納期限を過ぎてしまいやすいと言えます。
とはいえ、事前に正しい知識を得ておくことで、納付漏れは防ぐことができます。
- 源泉徴収とは?
- 源泉徴収しなければならない支払いは?
- 源泉徴収した所得税の納期限は?
- 注意したい最初の納期限
- 「納期の特例」を受けた場合の納期限
源泉徴収とは?
特定の所得を支払う際に、支払う者が一定の税率で計算した所得税の額を支払う金額から控除し、その控除した所得税の額を、定められた納期限までに国に納付する制度です。
源泉徴収しなければならない支払いは?
支払時に源泉徴収しなければならない所得は、法律で限定列挙形式で定められています。
限定列挙で定められているということは、定められている支払いについては源泉徴収しなければならず、逆に、定められていない支払いについては(定められている支払いに多少似ていても)源泉徴収しなくてよいということです。
個人に対する支払いであれば何でも源泉徴収した方がよいのかというと、ちょっと違います。
法律ではいろいろ定められているのですが、代表的なものは「給与」です。役員報酬や賞与も対象です。
そして、「司法書士、税理士、弁護士などに払う報酬」も源泉徴収の対象として、よく出てきます。
その他、忘れやすい支払いとして、個人の方に支払うデザイン料や写真の撮影料も対象になります。普段はあまり発生しない法人でも、例えばパンフレットやホームページを作成してもらった際に出てくるかもしれません。
ちなみに、相手先からの請求書で、源泉徴収税額の記載がなくても、源泉徴収すべき支払いについては源泉所得税を控除しなければなりません。
源泉徴収した所得税の納期限は?
源泉徴収した所得税は国に納付しなければなりませんが、その納期限は、原則として支払った月の翌月10日(10日が土日祝日の場合は、その後最初に到来する平日)です。
この納期限ですが、実務上はかなり厳しいと言えます。
というのは、月末に支払いをする法人が多いと思いますが、その場合、源泉所得税の納期限までたった10日しかないことになります。この短い期間内に、毎月正確に集計して納付するのは、かなりの事務負担になります。
ちなみに、ゴールデンウィークや年末年始を休む法人の場合は、月末からすぐに納期限が来てしまいます。
注意したい最初の納期限
上記の納期限の原則を知っていないと、うっかり過ぎてしまいやすいのが、法人設立後最初の納期限です。
税務署に法人設立届を提出してから何ヶ月か経つと、納付書(の用紙)を送ってくれますが、最初は納付書もありませんので、自発的に納付書を入手して→記入して→納付を行わなければなりません。
納付書は税務署に行けばもらえますが、早めに顧問税理士が決まっていれば、そういったこともサポートしてくれるので安心でしょう。
「納期の特例」を受けた場合の納期限
忙しい経営者の方にとっては、毎月10日までに源泉所得税を納付するというのは、なかなか面倒で負担になるものです。
そのような方には、「納期の特例」という制度があります。
この特例の適用を受けられるのは、給与を支給する人数が常時9名以下の法人に限るのですが、適用を受けると、源泉所得税の納期限を次のように年2回だけにすることができます。
1~6月中に源泉徴収した所得税の納期限・・・7月10日
7~12月中に源泉徴収した所得税の納期限・・・翌年の1月20日
適用を受けるには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を管轄の税務署に提出します。
ただし、この申請の効力は思ったよりも1ヶ月遅く発生するので注意が必要です。
例えば、申請書を2月に提出したとすると、2月中に源泉徴収した所得税を3月10日までに納付するというのは、原則のままで変わりません。
次の3月分から申請書の効力が発生するので、3~6月中に源泉徴収した所得税の納期限が、7月10日になるところから納期の特例がスタートするのです。
申請書を提出したからといって安心していると、提出した月の翌月10日に来る納期限をスルーしてしまいがちです。このような納付漏れがないよう、注意しましょう。